絵柄がかわいらしかったのでいわゆる表紙買いをしてみましたが、ドハマりしました。お話しして参ります。
ロミオとジュリエット
イギリスの劇作家「ウィリアム・シェイクスピア」の戯曲「ロミオとジュリエット」をオマージュした作品。元ネタは皇帝派・教皇派として対立する両家の元に生まれたロミオとジュリエットの悲恋の物語でした。
寄宿学校のジュリエットもまた、対立し合う国を故郷とする「犬塚露壬雄」と「ジュリエット・ペルシア」の恋慕をテーマとしています。ただしラブコメです。明るくおバカで騒がしい。
どんな感じなの?
寄宿学校、ダリア学園。敵対する2つの国の生徒が通う、この名門校に、許されぬ恋に悩む学生がいた。東和国寮の1年生リーダー“犬塚露壬雄”。彼の想い人は、宿敵・ウェスト公国寮の1年生リーダー“ジュリエット・ペルシア”。すべては、犬塚の命がけの告白からはじまった!! 絶対にバレちゃいけない恋物語!
“対立する国“というフレーズから酷く物騒な様子をイメージされるのではないかと思いますが、ダリア学園は海を挟んで分かれた東和とウェスト、両大陸の中心に存在する小さな島に設立されています。
かつ全寮制。国同士の争いからある程度独立した場所なのです。それゆえ両国の生徒間では諍いが絶えないものの、それほど物騒な内容ではなく、ギャグテイストで済ませられているわけです。
ダリア学園には東和国専用寮「黒犬の寮(ブラックドギー)」とウェスト公国専用寮「白猫の寮(ホワイトキャッツハウス)」の二つの寮が存在します。競い合うことで人材育成を図っているのか、領土問題の延長なのか、元々は和平交渉の場だったのか。そこいらの謎はまだ明かされていないので行く末を見守ることにしておきつつ。
顔を合わせれば罵詈雑言を浴びせあう犬塚とペルシア。というのも、二人は対立する寮の一年生リーダー。矢面に立ちみなを先導する立場であるわけです。
しかし犬塚の心中は複雑。何故ならダリア学園に入学してからの10年以上、ペルシアに想いを寄せているからです。
そんなわけで紆余曲折ありつつも、ペルシアの強くあろうとする気持ちに触れ、自分の中途半端な気持ちが彼女を傷つけていたことに気付いた犬塚は、その恋心をこの上なくダイナミックかつアグレッシブに打ち明けます。
その真摯な言葉にペルシアは心を動かされ、かくして二人は秘密の恋仲となります。
ここまで一話です。くっついてからが本番なわけです。
ポンコツカッコいい犬塚くん
黒犬の寮の一年リーダーとして振舞う彼は非常に勇ましい。
しかしその心の内は…。
意中の相手ジュリエット・ペルシアが絡んだ途端とことん軟派です。普段の凛々しい双眸はいずこへ。うぐぅ。
そのくせガチなときはガチ。寮内の派閥争いのため陥れられたペルシアの仇を討とうと奮起する場面。
根っこのところは男前。だからカッコいい。対ペルシア専用軟派っぷりも愛嬌としてむしろ高感度上昇のポイントになってしまう。とにもかくにも一途で、決してペルシア以外にはなびきません。ハニートラップも効果なし。こいつぁ惚れます。
ペルペルかわいい
この愚直なまでの穢れなき気高さ。
そしてちんまい。更にふわふわブロンド。
好きにならない理由などあるだろうか。いや、ない。
魂の慟哭はさておき。一話時点では、犬塚からペルシアへの好意は明らかですが、ペルシアから犬塚への好意は具体的に示されていません。犬塚の「世界を変える」という発言に心を動かされただけにも受け取れてしまう。
それは彼女が女性であるがゆえに家督を継げず、それゆえそんな世界の理を変えられるだけの強さを求めていることに起因しています。
だからこそペルシアと共にあるために世界を変えると口にした犬塚に惹かれたのだとしても、純粋な好意であるかはまだ漫然としています。
付き合ってからも割とそっけない。涙ちょちょぎれます。
けれども、自分のために奔走する犬塚を見て、自分の気持ちを言葉と行動で示します。
そのことでペルシアの心中を推し量ることができ、次第に愛しさ(読者からペルシアへの)がヒートアップすることになるのです。
まず本気で罵ってくれます。
蔑んでくれます。
初デートに失敗してしょげているところをフォローしてくれる懐の広さ。
付き合ってから1ヶ月の記念を祝おうとする犬塚を茶化すも、内心構ってもらいたい気持ちを吐露するいじらしさ。
付き合い立ての頃は用もなく呼び出す犬塚をたしなめる側だったのに、次第に犬塚に惹かれ、逆に用もなく黒犬の寮の彼の部屋まで訪れたり、
自分が誕生日を迎える瞬間を二人で祝いたいと誘ってみたり。
犬塚からペルシアへの好意は最初から100%です。それに対してペルシアから犬塚への高感度が次第に高まり、自ら彼をたしなめた行動をなぞらえる様子がたまらないのです。ペルペルかわいい。
まとめ
ペルシアがかわいい。それ以上の言葉は必要なかった―――。
さておいて。ギャグとシリアスのバランスが良く、更に話のテンポも良い。中だるみせず楽しく読めるラブコメです。ペルシアのデレを大ゴマで見せる辺り、いかにペルシアを魅力的に表現しようか、という作者の力の入りようが見て取れます。おすすめ。